自己破産|ネットワークビジネスの違法性

主文

1 原告らの主位的請求及び予備的請求に係る訴えを,いずれも却下する。
2 別紙一覧表1記載の各原告は被告aに対し,同表の「認容額」欄記載の各金額及びこれに対する平成13年3月28日から各支払済みまで年6分の割合による金員を,別紙一覧表2記載の各原告は被告bに対し,同表の「認容額」欄記載の各金額及びこれに対する同表の「最終約定支払期日」欄記載の日の翌日から各支払済みまで年6分の割合による金員を,別紙一覧表3記載の各原告は被告cに対し,同表の「認容額」欄記載の各金額及びこれに対する同表の「最終約定支払期日」欄記載の日の翌日から各支払済みまで年6分の割合(年365日の日割計算)による金員を,それぞれ支払え。
3 被告らのその余の反訴請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを3分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。
5 この判決は,第2,第4項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第一 当事者の求めた裁判

一 原告ら
1 本訴請求について
(一) 主位的請求
別紙一覧表1記載の各原告と被告aとの間で,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,別紙一覧表2記載の各原告と被告bとの間で,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,別紙一覧表3記載の各原告と被告cとの間で,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,当該原告の各被告に対する支払債務がそれぞれ存在しないことを確認する。
(二) 予備的請求1
被告aは,別紙一覧表1記載の各原告に対し,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,被告bは,別紙一覧表2記載の各原告に対し,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,被告cは,別紙一覧表3記載の各原告に対し,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,それぞれ,その取立てをしてはならない。
(三) 予備的請求2
別紙一覧表1記載の各原告と被告aとの間で,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,別紙一覧表2記載の各原告と被告bとの間で,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,別紙一覧表3記載の各原告と被告cとの間で,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,当該原告が各被告に対し,それぞれ支払いを拒絶することができることを確認する。
(四) 予備的請求3
別紙一覧表1記載の各原告と被告aとの間で,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,別紙一覧表2記載の各原告と被告bとの間で,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,別紙一覧表3記載の各原告と被告cとの間で,同表の「請求金額」欄記載の各金額につき,当該原告が各被告に対し,各金額の支払の請求を受けたときは,それぞれ,これを拒絶することができることを確認する。
2 反訴請求について
被告らの反訴請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は本訴反訴を通じ,被告らの負担とする。
二 被告ら
1 本訴請求について
原告らの主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。
2 反訴請求について
別紙一覧表1記載の各原告は被告aに対し,同表の「請求金額」欄記載の各金額及びこれに対する平成13年3月28日から各支払済みまで年6分の割合による金員を,別紙一覧表2記載の各原告は被告bに対し,同表の「請求金額」欄記載の各金額及びこれに対する同表の「最終約定支払期日」欄記載の日の翌日から各支払済みまで年6分の割合による金員を,別紙一覧表3記載の各原告は被告cに対し,同表の「請求金額」欄記載の各金額及びこれに対する同表の「最終約定支払期日」欄記載の日の翌日から各支払済みまで年6分の割合(年365日の日割計算)による金員を,それぞれ支払え。
3 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,原告らの負担とする。
4 第2及び第3項につき仮執行宣言

第二 事案の概要

一 本件は,株式会社d(以下「d」という。)から「健康寝具」セットを購入して,dとの間でモニター会員契約を締結し,割賦購入あっせん等を業とする信販会社(dと割賦購入あっせんの加盟店契約を結んで業務提携し,dに販売与信を継続していた。)である被告らとの間で,上記寝具セットの購入代金について立替払契約を締結した原告らが,被告らに対し,(1) 主位的に,@ 上記売買契約及びモニター会員契約が公序良俗違反等により無効であり,若しくは詐欺を原因として取り消し,あるいは解除したことにより,これと一体的な関係にある立替払契約も無効であり,あるいは遡及的に消滅した,A 被告らは,原告らに対し,立替払契約に基づく未払金を信義則上請求できない等と主張して,支払債務が存在しないことの確認を求め,(2) 予備的に,原告らが,被告らに対し,旧割賦販売法30条の4の規定に基づき,dに対する上記抗弁(モニター会員契約等の無効,取消,解除)を対抗して,被告らの取立てを禁止すること,又は原告らが支払いを拒絶できる法的地位にあることの確認を求め(本訴事件),被告らが,原告らに対し,前記立替払契約に基づき,未払いの立替金返還金及び割賦手数料並びに遅延損害金(被告b,被告cにおいては,約定利率年6分の割合,被告aにおいては,商事法定利率年6分の割合)の支払いを求めた(反訴事件)事案である。
二 前提事実(当事者間に争いがないか,挙示する証拠あるいは弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
1 被告らとd間の加盟店契約
被告らは,いずれも,割賦購入あっせん等を業とする信販会社である。
被告cは,e株式会社が,平成11年10月1日,割賦購入あっせん等を業とする信販会社であったf株式会社を合併して同社に帰属した一切の権利義務を承継するとともに商号変更したものである。本件における取引は,f株式会社がなしたものであるが,以下,便宜上,同社のなした取引につき,被告cの取引として表示する。
被告らは,d(あるいはdに下記の寝具を納入していた布団製造業者であるg株式会社)と割賦購入あっせんの加盟店契約を締結して業務提携し(被告cは平成9年3月28日,被告aは平成10年4月3日,被告bは同年10月10日),dに販売与信をしていた。
2 原告らとd間の契約
(一) 売買契約
原告らは,dとの間で,「h」という商品名の「健康寝具」セット(上掛布団,肌掛布団,敷布団,枕,掛布団カバー,敷布団シーツ,以下「本件寝具」という。)をそれぞれ別紙一覧表1ないし3記載の「契約年月日」欄記載の日に,「契約場所」欄記載の場所で,ダブルサイズ(同「サイズ」欄に「W」と表示)購入者は会員価格46万円,シングルサイズ(同「サイズ」欄に「S」と表示)購入者は会員価格36万円(いずれも消費税別)で購入する旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し,それぞれその引渡しを受けた(甲12)。
「h」は,マイナスイオンを発生する特殊な素材「ステイヤーズ」を織り込んだ繊維で作られ,健康に良いというのがdのふれこみであった(甲22ないし25,27,乙3ないし7)。
dは,本件寝具につき,平成10年末までは関連会社である株式会社iを通じてメーカーのg株式会社からダブルサイズ8万4000円,シングルサイズ6万3000円で仕入れていたが,平成11年からはg株式会社から,ダブルサイズ7万円,シングルサイズ5万円で直接仕入れるようになった(甲40)。
(二) モニター契約
(1) 原告らは,本件売買契約締結と同時に,dとの間で,次の内容のモニター会員契約(以下「本件モニター契約」という。)を,それぞれ締結した(甲20,21の1,28,40)。
@ モニター業務
原告らは,本件寝具を実際に使用して,毎月1回,その感想や意見を所定の様式の用紙に記載し,dに送付するとともに,1か月に500枚程度のチラシを配布する。
A モニター料
dは,原告らに対し,上記@の業務の対価として,月額3万5000円のモニター料を支払う。
B 契約期間
24か月間。ただし,後記の紹介手数料,ボーナスなどを合わせて業務委託限度額84万円が支給された時点で,契約は終了する。
C 紹介手数料,ボーナス
契約日より90日以内に新規購入者を10名あっせんすると,前記モニター料合計84万円残額の一括払を受けられ,新規購入者を1名紹介すると,その都度,紹介手数料1万0800円の支払いを受けることができる。また紹介した新規購入者が3名になると,別途ボーナスとして5万4000円が支払われる。
D dより支払われるA及びCの金額の合計(以下「モニター料等」という。)は,84万円を限度とする。
(2) 原告らは,本件モニター契約に基づき,dから,別紙一覧表1ないし3の「モニター料等受領額」欄記載のモニター料等を,それぞれ受領した。
3 原告らと被告らとの間の立替払契約
(一) 原告らは,別紙一覧表1ないし3の「立替払契約日」欄記載の年月日に,@被告らが「立替金(購入代金)」欄記載の本件寝具代金(消費税込み)全額を,それぞれ,dに対して立替払いし,A 原告らは,各対応する被告に対し,本件各寝具代金に「分割手数料」欄記載の割賦手数料を加えた「支払総額」欄記載の金額を「支払回数」「初回割賦額」「2回目以降割賦額」「最終約定支払期日」欄記載のとおり分割して支払う旨の立替払契約(以下「本件立替払契約」という。)を締結した(甲15ないし18,枝番号含む。)。
各原告と被告b及び被告cとの間では,遅延損害金を年6分の割合とする旨の約定がなされた。
(二) 被告らは,本件立替払契約に基づき,別紙一覧表1ないし3の「立替払日」欄記載の日に,「立替金(購入代金)」欄記載の立替金を,それぞれdに支払った。
4 dの取引形態及び破産
(一) dは,平成9年8月ころより,本件売買契約に本件モニター契約を組み合わせた商法(以下「本件モニター商法」という。)を取り入れて販売拡大に乗り出し,モニター会員を増やしていった。
さらにdは,平成10年1月ころ,次の仕組みのビジネス会員の制度を取り入れた(甲21の2,40,56の1,2)。
(1) ビジネス会員は,新規購入者を1名紹介する都度2万8800円の紹介手数料を受け取る。紹介購入者が3名に達すると,18万円がボーナスとして支給された上,マネージャーという資格を得,自分の直接下位にある会員(1次会員)からその6代下位にある会員(6次会員)まで,新規購入者ができる都度,1万0800円のコミッションを受け取ることができる。
(2) モニター会員は,いつでもビジネス会員に登録変更することができる。
(二) その結果,dは,平成10年2月ころより,売上及びモニター会員数を急速に増やした。dは,広報活動として,全国各地で説明会を開催し,有名女優を起用したパンフレットを作成して(甲22の1),その講演会を企画・主催し,あるいは,会報などを通じて商品の効用をアピールするとともに,ビジネス会員らに対してdの商法の有利性を強調し,販売活動への積極的な参加意欲を沸き立たせて会員を全国的に拡大していった。このようにして,全国各地に網の目のようにビジネス会員が増えていき,その結果,モニター会員の増加はますます顕著となった(甲40)。会員数の推移の概況は,別紙「d会員登録数(月別)」のとおりであり,売上などの推移の概況は,別紙「d売上等推移表」のとおりである。
(三) 平成10年10月ころには,dは,モニター会員増加に伴うモニター料等の支払いが大きな負担となったため,モニター料等の負担を減らすための制度改定を提案したが,ビジネス会員からの反対で頓挫した。その後もモニター会員は増え続け,支払うべきモニター料等は増加の一途をたどったことから,dは,平成11年2月20日を目処に従来のモニター会員制度を廃止することにして,その旨を広報誌で告知した(甲23の5)。それを知ったビジネス会員らは,駆け込み的にモニター会員の勧誘活動を活発化させ,平成11年1月から2月にかけて新規購入者が激増する結果を招いた(甲40)。平成11年3月に入り,dは,被告bから,同年2月16日以降に承認番号を発行した1384件・総額5億4000万円分について,dの販売方法に疑念があるとして,立替金の支払いを留保された(甲34,40,41,丙3)。しかし,dは,その後も既存のモニター会員に対して多額のモニター料等を支払い続けるとともに,上記の被告bから支払を留保された件についても,ビジネス会員らに対して平成11年3月と4月に紹介手数料等総額約1億9000万円超を支払い,一挙に資金不足に陥った(甲40)。
(四) そしてdは,平成11年5月31日にj地方裁判所k支部に自己破産を申し立て(甲37),同年6月30日に破産宣告を受けた(丙10の2,3)。
5 取消及び解除の意思表示
原告らは,dの破産管財人及び被告ら(被告cについては,その前身のf株式会社)に対し,
(一) 本件契約につき,詐欺を理由として取り消し,
(二) 平成12年法律第120号による改正前の特定商取引に関する法律(改正前の名称は,訪問販売等に関する法律。以下「旧訪問販売法」という。)6条に基づき,本件契約の申込みを撤回し,又は同契約を解除し(クーリング・オフ),
(三) dのモニター料支払義務の履行不能を理由に,予備的に,本件契約を解除する(債務不履行解除)旨の意思表示を書面でなし,上記書面はそれぞれ,別紙一覧表1ないし3の「通知
到達日」欄記載の日に,破産管財人及び各被告に到達した(甲78ないし105,いずれも枝番号を含む。)。
6 本件各立替払契約に基づく債務についての未払額
原告らは,別紙一覧表1ないし3記載の各「既払金額」欄記載のとおり支払い,各被告に対する各立替払契約上の債務の未払額は,上記各表の「請求金額」欄記載のとおりである(丁17の1ないし3)。
三 争点
1 本件売買契約に無効あるいは取消又は撤回,解除原因があるか
(一) 本件モニター契約の瑕疵がそのまま本件売買契約の瑕疵となるか
(二) 無効あるいは取消又は撤回,解除原因
(1) 公序良俗違反
(2) 錯誤
(3) 詐欺
(4) 債務不履行
(5) クーリングオフ
(6) 破産法59条2項による解除
2 上記の抗弁は本件立替払契約上の被告らの割賦金支払請求についての抗弁として主張しうるものとなるか
(一) 本件売買契約との一体性
(二) 平成12年法律第120号による改正前の割賦販売法(以下「旧割賦販売法」という。)30条の4に基づく抗弁主張
(三) 被告らは,信義則上,抗弁の切断を主張し得ないか
3 原告らが被告らに対し,上記抗弁主張をすることが信義則上許されないか
四 争点についての当事者の主張  
1 本件売買契約に無効あるいは取消又は撤回,解除原因があるか
(一) 本件モニター契約の瑕疵がそのまま本件売買契約の瑕疵となるか
A 原告らの主張
(1) 本件寝具購入の意思表示とモニター会員登録の意思表示は,登録申請書(兼商品購入申込書)という1通の書面により,不可分一体の意思表示としてなされていること,原告らは,モニター料の支払いを受けることが約束されているからこそ,本件寝具を購入したもので,モニター料の支払いを受けられないのに本件寝具を購入した者など皆無であることからすれば,本件の契約は,本件寝具の購入を条件とするモニター会員契約(無名混合契約)である。
(2) 仮に,本件売買契約と本件モニター契約が各個別になされたものであるとしても,@ 両契約は同時期に締結され,A dはモニター会員に本件寝具の使用に関するレポートを義務付けるなど,モニター会員たる地位と本件寝具の所有権が別人に帰属することを予定しておらず,B 原告らも,モニター料等取得を動機として本件寝具を購入したことなどからすると,両契約は,主観的にも,客観的にも相互に密接に関連づけられており,一方の契約が履行されるだけでは契約を締結した目的が全体として達成されない。そうすると,本件は,密接関連性に基づき,2個以上の契約のうち,1の契約の債務不履行を理由に,他の契約を解除することができる場合(最高裁平成8年11月12日判決参照)に当たる。
したがって,本件モニター契約の瑕疵はそのまま本件売買契約の瑕疵となる。
B 被告らの反論
(1) モニターになるためには,本件寝具の購入が必要であるが,本件寝具を購入したからといって,モニターになる必要はない。原告らの実質的契約目的,契約動機がモニター料等の取得にあり,本件寝具購入はその手段であったとしても,契約目的,契約動機と,契約成立要件としての契約意思(本件売買契約締結の意思,本件モニター契約締結の意思)は別である。また,契約の一方当事者であるdの契約目的,契約動機は本件寝具の販売,購入者の拡大にあったと考えられる。さらに,一般に商品売買契約において,代金支払のために立替払委託契約が締結された場合,両契約は目的と手段の関係に立つにもかかわらず,別個の契約と解されている。このように,本件売買契約と本件モニター契約は,当事者の意思の面からも,契約構造の面からも,全く別個の契約である。
(2) 本件モニター契約を締結しなくても,本件売買契約により本件寝具の引渡しを受け,その目的を達成できるものであるから,両者は性質上密接に関連づけられているものでもない。
原告ら主張の法理は,債務不履行解除の場合にしか妥当せず,その場合でも,社会通念上(=客観的には),モニター料の支払がなくても寝具として利用するという布団の主要な購入目的を達成することはできるのであるから,契約の要素たる債務の不履行があったということはできない。旧訪問販売法が改正された「特定商取引に関する法律」が「業務提供誘引販売取引」を規定して初めて,販売の誘引となった業務提供等と売買契約との一体性が一般的に承認されるようになったのであり,元来は別個独立のものである。
したがって,本件モニター契約の瑕疵はそのまま本件売買契約の瑕疵とならない。
(二) 本件売買契約につき,無効あるいは取消又は撤回,解除原因の存否
(1) 公序良俗違反による無効について
A 原告らの主張
本件モニター契約と一体若しくは密接関連性を有する本件売買契約は次の諸点から公序良俗に反して無効である。
(ア) 破綻必至性
顧客が,dから,本件寝具(シングルサイズの代金36万円,ダブルサイズの代金46万円)を購入すると,モニター会員となることができる。顧客がモニター会員になると,dから,24か月間にわたって毎月3万5000円,合計84万円と,本件寝具代金をはるかに上回るモニター料の支払を受けることができる。dには本件寝具代金しか収入がなく,これは,遅くとも4.3か月後には,その取引から生じたモニター料等の支払いで消えてしまうのであって,このようなモニター会員制度を継続すれば,損失は増える一方であり,破綻必至の商法であった。
(イ) 独禁法違反
本件モニター商法は,モニターとして寝具を購入してアンケートに回答する等の場合には,もれなく毎月3万5000円のモニター料を24か月間にわたり支払うというもので,これは,「ぎまん的顧客誘因」に当たるから,このような取引方法は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)19条,2条9項に基づく,不公正な取引方法(告示)8項,9項に該当し,公正な取引秩序を害するものである。
(ウ) 暴利行為
m会の回答等によれば,本件寝具は,シングルサイズが2万9000円程度,ダブルサイズが4万1000円程度(仮に,素材である「ステイヤーズ」の価値を積算しても,シングルサイズで4万5000円程度,ダブルサイズで6万1000円程度)の価額で店頭に並ぶべき商品であるにもかかわらず,シングルサイズを36万円,ダブルサイズを46万円で販売していたのであって,暴利行為である。
(エ) マルチ商法
dのビジネス会員制度は,旧訪問販売法11条1項所定の連鎖販売取引に当たり,本件モニター商法と結びついた破綻必至の制度で,その展開により人間関係利用型のマルチ商法特有の深刻な社会的被害をもたらすものである。
B 被告らの反論
(ア) 破綻必至性について
dは,本件寝具の売上数量とモニター会員数との関連に留意しつつ経営することによって,利益をあげることが可能であったから,モニター会員制度によって破綻必至であったとはいえない。破綻したのは,モニタ一会員を増やし過ぎたdの杜撰な経営や,ビジネス会員が,モニタ一会員数の制限に反対したことなどに起因する。
マルチ商法が公序良俗違反とされるのは,無限連鎖講等と同様に,その実質が金銭の配当組織に過ぎず,商品の販売はこれを隠蔽するための手段に過ぎないものということができ,@ 破綻の必然性,A多数の経済的損失者の現出,B非生産性・射幸性,Cぎまん的・誇大的勧誘行為といった特質を有するものである点に根拠があり,破綻必至性はその一要素に過ぎず,本件モニター商法は無限連鎖講等とその悪性の中核的部分を共有していない。
(イ) 独禁法違反について
独禁法第19条所定の不公正な取引方法不公正な取引方法(告示)8項,9項は,競争者を保護するための規定であり,競争者の顧客を自己と取引するよう勧誘することを要件としているところ,原告らはそもそも競争者の顧客ではないから,本件モニター契約はこの定義に該当しない。仮に該当するとしても,直ちに私法上無効になるといえず,また,契約が公序良俗に反するともいえない。
(ウ) 暴利行為について
dの値付けは寝具の訪問販売等業界においては特段高価であったわけではなく,また,商品の価値は主観的なものであるから,原告らが納得して購入している以上問題ありとすることはできない。
(エ) マルチ商法
dの商法は「マルチ商法」であるとはいえない。マルチ(まがい)商法性が問題となるのは,ビジネス会員についてであって,原告らはモニター会員であるから,マルチ(まがい)商法性とは無関係である。
また,連鎖販売取引も訪問販売法の規制の下に行われているのであれば,直ちに公序良俗に違反するものではない。
(2) 詐欺による取消について
A 原告らの主張
モニター会員制度は,構造的に開始後間もない時期に破綻することが必至の商法であったもので,dは,平成9年8月ころ,モニター会員に対して約束のモニター料等の支払いができなくなることを熟知しながら,それでもかまわないと考えて,本件モニター商法を開始し,モニター料等が支払われなくなることはないと原告らに虚偽の説明をして,原告らをその旨誤信させ,本件売買契約を締結させたものであるから,詐欺に当たる。
B 被告らの反論
本件モニター制度は,当初から破綻必至であったとはいえず,企業の経営選択は流動的な経営状況の中でなされるものであるから,直ちに,原告らとの本件モニター契約の締結当時,dに詐欺の故意があったとはいえない。
(3) 錯誤無効について
A 原告らの主張
原告らは,dからモニター料等全額が契約どおりに支払われるものと誤信し,本件売買契約を締結したものであるから,モニター料等の支払いを受けることは,契約の要素である。
本件売買契約が本件モニター契約と不可分又は密接関連性を有しないとしても,原告らが本件契約を締結する動機はモニター料等の支払いを受けることであり,これは明示的又は黙示的に表示されていた。
原告らにおいて,dのモニター会員制度が構造的に破綻必至のもので,モニター料等が中途で支払われなくなることを知っていれば,本件売買契約を締結しなかったものであるから,要素に錯誤がある。
B 被告らの反論及び主張
本件モニター商法は,原告らが本件モニター契約を締結した当時,破綻必至だったのではないから,錯誤の前提を欠くし,本件売買契約を締結した者が当然に本件モニター契約を締結するわけではないから,売買契約自体の錯誤となるわけではない。
また,本件モニター契約が原告らの主張する内容のものであるならば,そのような契約を締結すること自体に重大過失がある。
(4) クーリング・オフについて
A 原告らの主張
原告らのうち,dの営業所以外の場所で,本件売買契約を締結した者は,当然に旧訪問販売法6条に基づくクーリングオフをなし得る。
また,営業所で本件売買契約を締結した原告は,ビジネス会員らから自宅を訪問されるなどして,「モニター会員になれる機会は今しかない。」と,他の者に比して有利な条件を告げられて,営業所を訪れたものであり,同法2条1項2号,同法施行令1条1項2号所定の「特定顧客」に該当し,同法6条に基づきクーリングオフをなし得る。
同法の規定上,寝具については,これを使用した場合にも,クーリングオフの対象となるにもかかわらず,dが原告らに交付した登録申請書(兼商品購入申込書)には,「商品を使用し又は消費した場合には,クーリング・オフ対象外となることがありますのでご注意下さい。」と記載されており,これは,原告らの判断に影響を及ぼす重要な事実に関する不実の告知であり(旧訪問販売法5条の2第1項),かような不実の記載をした書面の交付があっただけでは,旧訪問販売法5条に規定する書面とは認められないから,クーリング・オフ期間は進行しない。
B 被告らの反論
dが原告らに交付した登録申請書の「クーリングオフ対象外」についての記載は,断定的記載ではなく,購入者の判断に影響を及ぼしクーリングオフ行使の妨げとなるような重要な事実に関する不実の告知ではないから,旧訪問販売法5条所定の書面の交付があったというべく,原告らがクーリングオフ解除をした時点では,クーリングオフ期間は経過していた。
(5) 債務不履行解除について
A 原告らの主張
dは,原告らに対し,本件売買契約及び本件モニター契約におけるモニター料等の支払義務を果たさないまま破産宣告を受けたため,モニター料等の支払義務は履行不能となった。
B 被告らの反論
金銭債権の性質上履行不能ということはありえず,dの破産財団から配当を受ける可能性も残されており,社会通念上も履行不能ということはできない。また,dは,破産宣告を受けたことにより,法により債務の個別的履行を禁じられているのであるから,債務を履行しないことは違法ではない。したがって,いずれにせよ,モニター料の支払義務は債務不履行となっていない。
(6) 破産法59条2項による解除について
A 原告らの主張
dと原告らとの間で締結された本件売買契約及び本件モニター契約において,原告らの本件寝具の購入及び附帯役務(レポートの提出)と,dのモニター料の支払義務とが双務契約の関係にあったところ,dが破産宣告を受けた当時,上記双務契約が双方未履行の状態にあった。
原告らは,dの破産管財人に対し,平成12年3月9日までに,破産法59条2項に基づき,本件契約の解除をなすかレポートの提出を条件にモニター料の支払を行うかを相当期間内に確答すべき旨を催告したが,dの破産管財人からは確答がないまま上記相当期間は経過した。
よって,本件各契約は破産法59条2項に基づき解除された。
2 原告らは,前記抗弁を本件立替払契約上の被告らの割賦金支払請求についての抗弁として主張し得るか
(一) 本件立替払契約は本件売買契約と一体性を有するか
A 原告らの主張
個別購入あっせん契約は,特定の商品の販売を目的として立替払契約による信用が与えられ,与信は特定の商品の売買目的の遂行以外のためには使用できない関係にあり,売買契約部分と立替払契約部分は,目的拘束的な依存関係にあり,実質上不可分一体である。
また,被告らは,dに対し,立替金を早期かつ確実に供給することによって,dが違法な商法を続行するのを資金面から支え,本件モニター商法の破綻を引き延ばし,多数の消費者被害をもたらしている。このように,本件契約は,経済面でも法律面でも本件立替払契約と一体のものとして結合している。
したがって,原告らは,本件売買契約上の抗弁を本件立替払契約上の被告らの割賦金支払請求についての抗弁として主張し得る。
B 被告らの反論
原告らの立替払の委託趣旨は売買契約代金の支払いのためであり,モニター料の趣旨は売買契約の履行のためであり,モニター料の支払原資をdに担保させるためではなかったはずである。
かかる契約目的(動機)を被告bは知らなかったし,知っていれば立替払をするわけがないのであり,原告らの動機のみをもって両契約が密接不可分一体の関係になるわけではない。
両者は,契約の主体,目的及び内容を異にする別個・独立の契約である。
旧割賦販売法30条の4は,消費者保護という社会的な要請から一時的な支払停止の限度で債権関係を相対的に定める私法上の原則の例外を設けた創設的規定であるから,本件売買契約及び本件モニター契約の無効又は遡及的消滅をもって,本件立替払契約の抗弁として主張し得ない。
(二) 原告らは,前記抗弁を旧割賦販売法30条の4に基づき,本件立替払契約上の被告らの割賦金支払請求についての抗弁として主張し得るか
A 原告らの主張
原告らの本件寝具の購入は,割賦購入あっせんに係る購入であり,寝具は,旧割賦販売法施行令1条の別表1により,同法2条4項の「指定商品」に指定されており,原告らは商行為として本件寝具を購入したものではなく,その値段はいずれも4万円以上であったから,旧割賦販売法30条の4第1項の要件を満たすものである。
同条の対抗事由はできるだけ広く解すべきであって,本件のような業務提供誘因販売取引個人契約(改正された特定商取引に関する法律)において商品の販売の誘因となった業務提供やその対価の支払いがないことも,同条をもって対抗しうべき事由に該当するというべきである。
B 被告らの反論
旧割賦販売法30条の4においては,売買契約に直接関連して生じた抗弁でなければ対抗できないところ,本件の契約が,売買契約とモニター契約と不可分に一体化した1個の混合契約だと解すると,売買契約性を喪失するから,本件契約に係る抗弁は,同条によって主張し得るものではない。
逆に,本件モニター契約が,本件売買契約とは別個独立の契約であるとすれば,原告ら主張の抗弁は本件モニター契約についての抗弁に過ぎず,「商品の販売につき」生じている事由とはいえないから,旧割賦販売法30条の4の要件を欠く。
また,同条所定の対抗事由は,購入者が販売業者との間における本来的な購入目的を達成するために,売買契約上生じている事由,または契約上生じていてその達成が不可能であることを割賦購入あっせん業者が知っていた事由であると解すべきである。
さらに,原告らモニター会員は,レポートの提出やチラシ配布の対価としてモニター料を受領していたのであり,これは,「作業又は労務の請負」として「商行為」であるから,旧割賦販売法30条の4第4項2号に該当し,同条1項の適用がない。
加えて,モニター料の不払いは,本件売買契約を履行した後に生じた事由である点からも,同条にいう「販売につき」生じた事由には該当しない。
(三) 被告らは,本件売買契約上の抗弁につき,本件立替払契約上の割賦金支払請求において切断することを,信義則上,主張し得ないか
A 原告らの主張
信販会社は,立替払契約の相手方である消費者が販売業者の信用問題により損害を被ることのないよう,加盟店契約締結時及び締結後,販売業者の商品や販売方法,経営状態及び信用状態を把握し,問題のある業者とは加盟店契約を締結すべきではないのであって,販売業者の違法な販売や倒産等によるリスクは信販会社が負うべきである。
しかし,被告らは,dが破綻必至の商法によって本件寝具を販売しているのを知りながら,あるいは,少なくとも,dの販売方法等の調査をすれば,それを知り得べきであったにもかかわらず,dへの与信を続け,原告らとの立替払契約を締結したのであるから,信義則上,本件売買契約上の抗弁の切断を主張し得ない。
B 被告らの反論 
割賦購入あっせん業者が,購入者に対して負う義務は,立替払契約の本旨たる立替払をなすことに尽きるのであって,それ以外に,信義則上の加盟店管理義務を負うべきいわれはない。仮に負うとしても,それは契約上の付随義務にとどまるから,本件売買契約上の抗弁の切断を主張し得る。
3 原告らが被告らに対し,売買契約における前記抗弁を主張をすることが信義則上許されないか
A 被告らの主張
(一) 本件モニター契約により原告らが受領するモニター料等は不労所得であり,原告らは,その不労所得を得るために本件立替払契約を締結している。
このような原告らが,本件売買契約上の抗弁主張をして,本件立替払契約上の債務の支払請求を拒み,被告らに責任を転嫁することは,信義則に反し許されない。
(二) 原告らの本件モニター契約は一種の代理店契約であり,原告らは,dの一機関ともいうべき立場にあって,保護されるべき単純な「消費者」ではない。
また,本件モニター契約による報酬の支払を要求する社会的要請は認められず,著しく射幸性を有するものである。
モニター会員制度は,dの破産前に廃止され,原告らの仕事がないのであるから,将来の報酬も発生していない。
原告らは,既発生のモニター料等は取得しており,モニターの仕事をしない将来の報酬が履行されないことを主張しているに過ぎない。
モニター会員制度は,無限定に2年を限度として最大84万円まで支払うというものではなく,会員の仕事ぶり,ビジネス会員への移行等を考慮して,dにおいて,変更・廃止することができたものである。
原告らは,本件立替払契約に際し,モニター料等から割賦金を支払い,自らは出捐する意思がないのに,これを秘して,自ら出捐する意思があるものと被告らを誤信させ,自己の購入代金をモニター料等の配当原資とし,さらに自己の先行顧客の配当原資となることを承認したうえで,信販会社に立替払させ,後行顧客の販売代金からモニター料等の配当を受けようとした者たちであり,dの倒産を結果的に先延ばしすることに加担したのである。
また,原告らは,ビジネス会員と密接な関係にあり,一部は他のモニター会員を勧誘しており,保護されるべき純粋な「消費者」ではない。
原告らは,モニター料等の不払を理由に信販会社への割賦金支払を拒否することができないのを承知の上で,本件売買契約及び本件立替払契約を締結したものである。
原告らは,本件売買契約に基づき本件寝具の引渡しを受け,本件モニター契約に基づきモニター料等の支払を受けているにもかかわらず,これらを返還することなく,自ら本件寝具やモニター料等の取得根拠である本件売買契約及び本件モニター契約について,公序良俗違反又は錯誤による無効,詐欺取消,債務不履行による解除を主張しており,このような二律背反行為を認めることは,著しく社会正義に反し,健全な社会常識に反する。
原告らは,勧誘者あるいはビジネス会員と密接な関係にあり,組織化されていた者たちであり,d商法が破綻必至であったことについても悪意であり,被告bのトラブル発生後の再度の電話確認に対してなおモニター会員であることを秘していたり,dの破綻後は一転して信販会社に支払停止の抗弁書を組織だって送付するなど,単純な保護されるべき「消費者」ではない。
また,マルチの経験者も混入している。
以上の事実から,原告らが単純な保護されるべき「消費者」として,旧割賦販売法30条の4の支払停止の抗弁を主張することは,明らかに信義則に違反する。
(三) 抗弁権の接続を正当化する理由は,@ 割賦購入あっせん業者と販売業者との間には,購入者への商品の販売に関して密接な取引関係が継続的に存在していること,A このような密接な関係が存在するため,購入者はいわゆる自社割賦と同様に,対抗事由が存する場合には支払請求を拒みうることを期待していること,B 割賦購入あっせん業者は販売業者を継続的取引関係を通じて監督することができ,また損失を分散,転嫁する能力を有していること,C これに対して,購入者は,購入の際に一時的に販売業者と接するに過ぎず,また,契約に習熟していない,損失負担能力が低い等,割賦購入あっせん業者と比して格段の能力差があること等にあるから,このような前提条件のいずれかが失われる場合は,信義則上抗弁権の接続は制限されるべきである。
(1) 公序良俗違反無効の抗弁
被告cは,本件売買契約が公序良俗に反することを知らなかったから,上記のような前提が崩れ,反社会的な契約に加担した購入者に対して,売買契約が公序良俗に反することを知らずに立替金を交付した割賦購入あっせん業者は被害者的立場に立つから,信義則上抗弁権の接続は制限される。
(2) 債務不履行解除の抗弁
原告らが,dから本件寝具を購入した時点では,dは未だモニター料等の支払を開始していなかったのであるから,dがモニター料等を支払う債務を最後まで履行できるかどうかは,購入時点では不確定であったというべきところ,将来における履行の可能性についての判断は,商品を購入することを決断した原告らがその責任において行うべきであると考えられる上,被告cは,原告らが本件寝具を購入する際,原告らの資力を補うため,原告らの依頼を受けて購入代金を立替払いしたものに過ぎないから,そのような被告cに,長期に及ぶ分割金の支払期間を通じてdの債務不履行の責任を負わせるのは相当ではない。
仮にそうでないとしても,被告cが立替払契約時に債務不履行が発生することを予期しえなかった以上,上記のような前提が崩れ,本件モニター契約の存在を知らず,したがって,その債務不履行の生じ得ることを予期しえない被告cは,損失を分散,転嫁する契機が得られない。
B 原告らの反論
(一) 信販会社に加盟店管理責任が存することは,旧通産省の通達や,裁判例によって認められている。
そして,被告らは,加盟店契約の締結時ないしその継続中に,dが破綻必至の本件モニター商法を行っている事実を認識しながら,敢えて加盟店契約を締結ないし継続し,原告らと立替払契約を締結したのである。
dの本件モニター商法は,被告ら信販会社との加盟店契約なしでは到底成立し得ず,まさにクレジットシステムを悪用した商法であるが,被告らは悪質加盟店をクレジットシステムから駆逐するという加盟店管理責任を著しく怠ったというだけでなく,さらには故意にこれに加担し,クレジット被害を拡大させ,手数料収益を貪ったのである。
このような事情のもとで,dが破綻するやいなや,被害者面をして原告ら消費者にその責任を転嫁しようとする被告らの信義則違反の主張こそが信義則に悖るものであることは明白であり,被告らには旧割賦販売法30条の4の信義則上の制限などを主張する資格などない。
(二) これに対し,原告らが抗弁対抗を主張することは何ら信義に悖るものではない。
確かに,本件モニター商法は,販売する寝具の価格を超えるモニター料等の支払を約束するモニター業務委託契約を,dの契約者のほとんどに対し無差別に勧誘し締結していたのであるから,客観的にみて,およそ継続不能であることが明らかな破綻必至の商法であるが,契約締結時,原告らには,dの営業の実態を知り得る情報は与えられていなかった。
原告らは,dのぎまん的勧誘に乗せられた被害者的な性格を有しており,原告らが本件モニター商法に「加担」したこと,モニター料を一部収受していることを,過大かつ歪曲に評価し,信義則違反を論じることはできないというべきなのであって,本件はまさに原則どおりに抗弁対抗を認めるべき事案である。
(三) そもそも,抗弁対抗規定は,信販会社の加盟店管理責任を一歩進めて,販売店とのトラブルが発生した場合の損害は,未払金に関する限り信販会社が原則的に無過失責任を負うことを規定したものである。
かかる抗弁対抗規定の趣旨を前提とする限り,同規定に基づく処理を信義則により制限するためには,@ 消費者が,販売店がクレジット契約の仕組みを不正に利用して信販会社に損害を与えることを知りながら自ら積極的に加担していた(信販会社に対する背信的悪意)事情の存在と,A 信販会社において,販売店に対する消費者の抗弁事由の発生について,加盟店調査義務を尽くしたが知り得なかった(善意無過失)事情の存在が要件となるものと解される。
本件では,構造的にみても,サンプリング手法による原告本人尋問の結果によっても,個々のモニター会員被害者にとって,dの商法が,信販会社による立替金一括払を利用したクレジット不正利用の事案であることを認識するきっかけがそもそも存在しないか,又は著しく希薄であることが明らかな事案であり,かかる原告らに被告らに対する関係での背信的悪意など到底認められない事案である。また,被告担当者らが,dの販売方法の探知のための,法令・通達・実務書・内規などが要求する最も初歩的調査を怠っていたことも,既に明らかとなっている。したがって,本件について抗弁権対抗規定の適用を信義則上制限できる関係にはない。

第三 当裁判所の判断

一 本訴請求について
本訴請求はいずれも,反訴給付請求に係る本件立替払契約に基づく請求権の不存在あるいはその請求を拒絶し得る地位にあることの確認を求め,若しくはこれに基づく取立の禁止を求めるものであり,反訴請求の裏返し(反対形相)の関係にあって訴訟物の実体を共通にするものである。
その結果,反訴請求についての判断がなされる以上は,これと裏腹の関係で,本訴請求についての判断もなされることとなり,また,反訴給付請求は,執行力を有する点において,訴訟物の実体を共通にする本訴請求を包摂する関係にあるところ,反訴給付請求についての判断に加えて,本訴請求の判断を得ておく必要性を認めるべき事情は想定し難い。
そうすると,反訴が提起され,その終局判決がなされる以上(民訴法262条2項参照)は,本訴に係る各訴えについては,確定的に確認の利益あるいは訴えの利益を欠くに至り,いずれも不適法であるとして,却下するほかない。
二 反訴請求について
1 争点についての判断
(一) 甲13,23,34,40,51ないし57,60,63ないし68,76,77,106ないし113,131,甲個A1,2,27,37,38,41,43,48,50,52ないし57,60,62ないし64,67ないし69,74,75,77,78ないし80,82ないし84,86,88,甲個B8,9,23,29,33,34,36,42,43,45,50,53,54,甲個C4,6,7,9,10,16,18,19,24,28,30,31,乙1ないし3,丙16,17,20,21,丁9ないし12,16(いずれも,枝番号のあるものは,枝番号を全て含む。以下同様),証人l,同n,同oの各証言,原告p,同q,同r,同s,同t,同uの各本人尋問結果並びに弁論の全趣旨を総合すると,次のとおり認定できる。
(1) モニター会員になるには,本件寝具を購入することを要し,本件寝具の購入申込みとモニター会員の登録は,「登録申請書面(兼商品購入申請書)」と題する1通の書面でなされる場合が多かったが,本件寝具の売買契約とは別に「業務委託契約書」でなされる場合もあった。
本件寝具を購入した場合に,必ずモニター会員になる必要はなかったが,dから本件寝具を購入した者は,その殆ど全部がモニター会員かビジネス会員となった。しかも,ビジネス会員に比べてモニター会員の数が圧倒的に多かった。
(2) モニター会員が提出すべきレポートは,モニター会員となって一番最初に提出するファーストレポートと,以後毎月提出するマンスリーレポートがあった。いずれのレポートも,質問事項が記載されている書面を,dがモニター会員に交付して,モニター会員がその質問に答えるという非常に簡易なものであった。レポートの提出は,各モニター会員ごとに提出すべきであったのに,同一人が多数のレポートを回答して提出する事例が続出した。dも,広報誌平成10年12月号及び平成11年1月号で,注意喚起したことはあったが,モニター会員から提出されたレポートを,有効に活用することはなく,マンスリーレポートの提出は,平成11年2月21日(平成11年3月分)以降不要となった。
(3) モニター会員の配布すべきチラシは,dからモニター会員に送付されたが,その枚数は,月間2000枚から500枚に減少され,平成10年10月1日以降はチラシ配布は廃止された。しかも,チラシ配布が義務付けられていた当時でも,dがチラシ配布を確認しないため,ほとんどのモニター会員がチラシを配布していなかった。
(4) その結果,モニター会員は,平成10年10月以降,チラシ配布をする必要がなくなり,平成11年2月21日以降,マンスリーレポートの提出も不要となり,役務提供をすることなくモニター料を受領することができた。
(5) モニター会員は,本件寝具の購入に当たって,被告らとの間の立替払契約を利用することができた。シングルサイズの本件寝具を購入したモニター会員が,被告らとの間で24回払の立替払契約を締結した場合,モニター会員は,毎月dからモニター料3万5000円を受け取ることができるのに対して,被告らに支払わなければならない1か月の割賦金が1万8000円(2回目以降割賦額)にとどまった。
そして,モニター会員は,dから毎月20日にモニター料を受け取ることができるのに対し,割賦金の支払いは,被告aにつき毎月27日,被告cについ毎月26日,被告bにつき毎月5日であり,モニター料の受取日が割賦金の支払日よりも先行していたことから,モニター会員は,モニター料を原資として,被告ら信販会社に対し割賦金を支払うことができた。
これにより,モニター会員は,何の金銭的負担も伴うことなく,本件寝具を購入することができる上,モニター料と被告らへの支払額との差額(前記の場合,1万7000円)を毎月得ることができた。
(6) ビジネス会員などdの販売員から本件寝具の購入とモニター会員制度の説明を受けた者は,その多くが,それではdに何のメリットもないことから,その内容に疑問や不審を感じた。しかし,dは,ビジネス会員である販売員を通じ,顧客に対し,モニター会員制度が成立する理由として,@ 高額の広告費を支出するのに比べて,モニター料を支払って口コミで本件寝具を宣伝した方が,費用も安く宣伝効果があること,A dにはモニター料等を支払うだけの自己資金があること,B モニターの人数を制限していること,C モニター会員からビジネス会員に移行する者が多数いることなど,虚偽の説明をしていた。
そのため,原告らを始めとするdの顧客は,その説明に半信半疑ながらも,本件寝具を購入してモニター会員に登録すれば,簡単な仕事をするだけで本件寝具購入代金をはるかに上回るモニター料等を受け取ることができ,小遣い稼ぎをできることに着目し,dとの間で,本件各契約を締結するとともに,被告らとの間で,本件立替払契約を締結して,本件寝具購入代金を被告らの立替金で支払った。
(7) dが平成10年1月ころ,ビジネス会員制度を導入した後は,ビジネス会員が紹介手数料目的に活発な勧誘活動を開始し,何らの金銭的負担がないモニター会員を勧誘してもよく,その勧誘が容易であることから,モニター会員数が急増した。
dは,当初,モニター会員数を限定1000人と告知していたが,平成10年5月ころには,モニター会員数が1000人を超え,さらにdは,同年6月ころ,モニター会員数を限定2000人と告知したが,同年7月には,モニター会員数が2000人を超えた。dは,同年2月に大阪営業所を開設し,同年4月に東京営業所を開設し,全国で説明会を開催して規模を拡大しており,モニター会員の急増に拍車をかけていた。
(8) d幹部のv(平成10年5月末まで大阪営業所長,同年6月1日からd本社の専務取締役)は,モニター会員及びビジネス会員の増加に不安を感じ,モニター会員やビジネス会員などの正確な人数を把握した上で,dの将来の経営予測をしたところ,このままでいくと,dは,平成11年春ころ,モニター会員に支払うモニター料等や,ビジネス会員に支払う紹介手数料等の支払が困難となり,破綻することが見込まれた。そして,vの予測は,平成10年6月ころから,代表取締役のw(以下「w社長」という。)ら経営陣も知るところとなったが,同社長は当初,それを深刻に考えず,すぐに打開策を模索しようとはしなかった。
(9) とはいえ,dは,モニター料,ビジネス手数料の支払が大きな負担となっていたため,平成10年10月ころ,モニター料の減額などを骨子としたモニター会員制度の変更案を示したが,ビジネス会員の強硬な反対を受けて変更を断念した。
しかし,dは,その後も,新たな営業所を開設するなどして規模を拡大させたことから,モニター会員は増加し続け,dが支払うモニター料,ビジネス手数料も増加の一途を辿った。
そこで,dは,広報誌平成11年2月号等で,ビジネス会員に,モニター会員が定員に達したとして,同年2月20日にモニター会員制度を廃止することを告知したところ,ビジネス会員の新規購入者獲得活動が活発化して,新規モニター会員が,平成11年1月に1469人,同年2月に3478人と駆け込み的に殺到した。
(10) テルメイト会員制度の導入
dは,平成11年2月20日,モニター会員制度を廃止して,「テルメイト会員制度」を導入し,テルメイト会員制度には,平成11年2月から4月までの間に,474名が参加した。上記制度の内容は,次のとおりである。
ア テルメイト会員となるには,現金又はクレジットカードで本件寝具を購入して,会員登録を行う。
イ テルメイト会員となると,活動費として,毎月3万5000円を1年間にわたって受け取れる。なお,モニター会員制度と異なり,レポートの提出義務はない。
(11) いちご倶楽部制度の導入
dは,モニター料等の支払原資を獲得すべく,平成11年4月から,「いちご倶楽部制度」を立ち上げ,約390名の参加を得たが,モニター料支払の資金を獲得するには足りなかった。上記制度の内容は,次のとおりである。
ア 参加者は,登録費用2100円,年会費3150円,広告チラシ購入費1万0500円を支払う。
イ 参加者が,新たな者をいちご倶楽部に参加させると,子会員となり(1次会員),子会員は広告チラシ購入代金の10パーセントである1000円の紹介手数料が得られる。さらに,一次会員が新たな者をいちご倶楽部に参加させると,1名あたり500円のロイヤリティが得られるが,4次会員で打ち切りとなる。
また,参加者が紹介の実績を上げる都度,抽選券がdから発行されて,抽選により現金が当たるという特典もあった。
(12) dと被告らの加盟店取引
@ 被告cとの取引
被告cの取扱件数は,平成9年11月まで1桁であったのに,同年12月に44件,平成10年1月に54件,同年2月に106件と急増した。同年7月14日,被告c本社のお客様相談室に,モニター会員制度とビジネス会員制度に関する問い合わせがあったことに端を発し,被告cは,dの販売方法に連鎖販売取引等の問題があると考え,同年8月7日,一旦は,dとの加盟店契約を解消することを表明したものの,w社長が取引継続を要請したこと等から,既にdに交付した立替払契約書を使用した立替払契約分を継続することとし,直ちに加盟店契約を打ち切らなかった。その結果,被告cの取扱件数は,同年8月379件,同年9月408件,同年10月394件,同年11月372件と,ほとんど減少しなかった。
その後,被告cは,同年12月62件,平成11年1月53件,同年2月11件と,その取扱件数を減少させていき,同年3月の17件を最後に,dとの加盟店契約を打ち切った。
A 被告aとの取引
被告aは,従前から,gとの間で加盟店契約を締結していたが,dとの間で,gとの加盟店契約を前提に,dをgの代理人(子番加盟店)として,dの顧客についても,被告aとの間で立替払契約が締結できるクレジット利用契約を締結した。
被告aの月間取扱件数は,平成10年5月176件,同年6月99件,同年7月69件と推移していたが,被告cがdとの取引中止の意向を示した同年8月が297件,同年9月294件,同年10月1088件と急増するに至った。
同年10月中旬ころ,被告aのお客様相談室に,「dから寝具を購入してモニター会員になると,毎月モニター料がもらえるが,もらって大丈夫だろうか。」との問い合わせがあったことに端を発し,被告aは,dのビジネス会員制度が連鎖販売取引類似のものであると考え,同年11月中旬,w社長に対し,一定の猶予期間をもって,連鎖販売取引類似のビジネス会員制度を中止するなど,販売方法の改善を要請するとともに,モニター会員からの立替払契約は受け付けないと申し入れた。これに対し,dは,ビジネス会員ら販売員に対して,被告aの立替払契約の利用はビジネス会員に限定し,モニター会員の立替払契約については,被告bを利用するよう指示したため,被告aの取扱件数は,同年11月が701件,同年12月が562件,平成11年1月が369件,同年2月が119件と減少した。
しかし,被告aは,dの販売方法について何らの改善も確認できなかったことから,平成11年2月末をもって,d顧客との立替払契約を終了した。
B 被告bとの取引
被告bがdとの間で加盟店契約を締結した当時は,被告cから取引中止の意向を示されたり,被告aからモニター会員の立替払いは受け付けない旨の意向を示されたりしていたころであり,dにおいて,ビジネス会員ら販売員に対し,モニター会員の立替払契約に被告bを利用するように指示したため,被告bの取扱件数は予想を大幅に超えて,平成10年10月が64件,同年11月が455件,同年12月が967件と急増した。
平成11年2月1日,匿名の男性から被告bの営業課に,「チラシ配布等のモニター活動を行えば,毎月3万5000円のモニター料が支払われるとのこと,信販会社がクレジット代金支払について保険をかけているので,仮にdが倒産しても安全,安心であると聞いたが,本当か。」との問い合わせがあったことから,被告bは,同月16日,電話で立替払契約の申込者20人にモニター会員か否か確認したところ,全員がモニター会員であることが判明した。
さらに,同様に270人から280人に対して確認したころ,約8割がモニター会員であることが分かった。
そのため,被告bは,同月17日,w社長に対し,同月20日締め分以降の清算金の支払いを留保する旨通知した。
そして,被告bは,同年3月10日,立替払契約した者がモニター会員か否か,立替金の支払意思を確認できるまで,dに対する総額約5億4000万円の清算金の支払いを留保した。
(13) 破産申立等
dは,被告bによる清算金の支払が停止していたものの,モニター会員やビジネス会員に対して,平成11年3月分,4月分のモニター料やビジネス手数料等も支払った。
dは,平成11年5月20日,モニター料,ビジネス手数料の支払が不能になって営業を停止し,同月31日,自己破産の申し立てをするに至った。
(二) 本件モニター契約の瑕疵がそのまま本件売買契約の瑕疵となるか
前提事実及び前示認定事実によれば,原告らは,本件寝具の品質,価格に惹かれて本件寝具を購入したのではなく,dとの間で本件売買契約及び本件モニター契約を,被告らとの間で本件立替払契約をそれぞれ締結すれば,被告らに返済すべき割賦金(たとえば,シングルサイズの本件寝具を購入した原告において,2回目以降の割賦額は,月額1万8000円である。)を上回るモニター料月額3万5000円を労せずして取得でき,いい小遣い稼ぎになると考えて,本件寝具を購入すると同時に,本件モニター契約を締結したものであり,また,dにおいても,本件売買契約だけを単独で成立させる努力はせず,販売員等に対し,モニター会員制度又はビジネス会員制度を組み合わせてより多くの顧客を勧誘するよう指導していたもので,だからこそ,建前上は,本件寝具購入の条件としてモニター会員に登録する必要はなかったものの,dから本件寝具を購入した者は,そのほとんどがモニター会員かビジネス会員に登録したものといえる。
そうすると,本件売買契約と本件モニター契約とは,法形式上は別個のものではあるが,両契約は密接不可分に結びついた契約であり,本件売買契約及び本件モニター契約を全体的に観察して,そこに無効,取消,解除事由が存する場合には,本件売買契約に当該事由が存するものというべきである。
(三) 本件売買契約に無効あるいは取消又は撤回,解除原因があるか
まず,公序良俗違反に係る無効事由の存否につき検討するに,前提事実及び前示認定事実によれば,次のとおり判断できる。
(1) 破綻必至性
dは,モニター会員に対し,本件寝具を代金36万円(シングルサイズ,仕入価格5万円)あるいは46万円(ダブルサイズ,仕入価格7万円)で売却する一方で,2年間で合計84万円という本件寝具の価格をはるかに上回るモニター料等の支払を約束している。dは,専ら,ビジネス会員制度とリンクした販売方法(モニター会員を多く紹介するほど多くの手数料を取得できるビジネス会員を,dの実質的な販売員として,本件モニター契約とセットで本件寝具を販売する方法)によっており,dが支払うべき経費(一般経費のほか,モニター料及びビジネス手数料)は,その売上(本件寝具代金)を超えることができない構造となっていた。
つまり,本件モニター商法は,構造的に,モニター会員を増やし続けて当座の経費を賄う自転車操業をせざるを得ないもので,モニター会員数が頭打ちになった時点で,売上をはるかに超える経費の負担に耐えられず,破綻する運命にあったことが明らかである。
(2) 独禁法違反
dは,ビジネス会員を通じ,虚偽の説明(@ 高額の広告費を支出するのに比べて,モニター料を支払って口コミで本件寝具を宣伝した方が,費用も安く宣伝効果があること,A dにはモニター料を支払うだけの自己資金があること,B モニターの人数を制限していること,Cモニター会員からビジネス会員に移行する者が多数いることなど)をして,顧客に対し,本件モニター商法が破綻必至であることを隠蔽し,冷静な判断能力を失わせて本件契約を締結させるに至ったものである。このような勧誘方法は,独禁法2条9項に基づく昭和57年公正取引委員会告示15号にいう不公正な取引方法の8項(ぎまん的顧客誘因),9項(不当な利益による顧客誘因)に該当し,公正な取引秩序を害するものというほかない。
(3) マルチ商法
ビジネス会員制度が連鎖販売取引(マルチ商法の一種)であり,モニター会員制度自体は直ちに連鎖販売取引に該当するものではない。
しかし,dは,平成9年8月ころから本件モニター商法を手がけたところ,ビジネス会員制度を取り入れた平成10年1月以降のモニター会員数は,飛躍的かつ加速度的に増加し,多くのモニター会員を勧誘すればするほど多くの手数料を受け取れるビジネス会員は,dの手駒となり組織的な勧誘活動を行うことで,モニター会員数を飛躍的に増大させ,dの売上とともに,将来的には売上をはるかに上回る経費(モニター料及びビジネス手数料)を膨張させ,もって,本件モニター商法を維持・発展させ,果ては破綻にまで追い込む原動力となっている。
このように,ビジネス会員制度は,本件モニター商法を維持・発展させただけでなく,その構造的な破綻必至性の中核部分を担うものであったといえることに鑑みれば,ビジネス会員制度を内包したモニター会員制度も,連鎖販売取引類似のものと評価せざるを得ない。
(4) 暴利行為について
m会の回答等によれば,本件寝具は,シングルサイズが2万9000円程度,ダブルサイズが4万1000円程度(仮に,素材である「ステイヤーズ」の価値を積算しても,シングルサイズで4万5000円程度,ダブルサイズで6万1000円程度)の価額で店頭に並ぶべき商品であると指摘されている。
また,g株式会社からの直接仕入れ価格は,ダブルサイズ7万円,シングルサイズ5万円であったことからすると,シングルサイズ36万円,ダブルサイズ46万円の販売価格は,本件売買契約のみを個別的に観察すると高額に過ぎるところである。
しかしながら,密接不可分の関係にある本件モニター契約による顧客への利益供与の点とを総合的に観察すると,上記販売価格が高額であることから直ちに,dによる暴利行為であるものと評価することはできない。
(5) 結論
(1)ないし(3)の事実から,本件モニター商法は公序良俗に反するものと認めるに十分であるから,本件モニター契約と密接不可分の関係にある本件売買契約も公序良俗に反し無効であるものというべきである。
したがって,その余について触れるまでもなく,原告らは,dに対し,本件売買契約の無効を,売買代金請求に対する抗弁事由として主張することができる。
(四) 原告らは,前記抗弁を本件立替払契約上の被告らの割賦金支払請求についての抗弁として主張し得るか
原告らと被告らとの間の本件立替払契約は,被告らが,原告らのdに対する本件寝具購入代金を立替払した上で,原告らから,2か月以上の期間にわたる3回以上の分割での支払を受けるものであるから,旧割賦販売法30条の4の「割賦購入あっせん」(同法2条3項2号)に当たる。
また,本件寝具は,旧割賦販売法施行令1条1項別表1第4号の「寝具」に当たり,同法2条4項の「指定商品」に該当し,その値段はいずれも4万円以上である。
そして,原告らモニター会員が,レポートの提出やチラシ配布の対価としてモニター料を受領していたとしても,これをもって直ちに,営業的に「作業又は労務の請負」をなしたものとはいえず,原告らにとって商行為であるものと認めるべき事由はない。
したがって,本件売買が公序良俗に反し無効であるとの抗弁は,旧割賦販売法30条の4第1項の要件を満たすから,その余について触れるまでもなく,本件立替払契約上の被告らの割賦金支払請求に対し,これを拒絶すべき抗弁として主張し得るものとなる。
(五) 原告らが被告らに対し,売買契約における前記抗弁を主張をすることが信義則上許されないか
(1) 旧割賦販売法30条の4の規定は,信販会社に対する関係で,消費者の利益を保護するためのものであり,私法上の重大な特則として,抗弁対抗の規定が設けられたのは,商品の売買契約と立替払契約とは別個独立の契約であって,本来であれば,売買契約に無効,取消事由等があっても,割賦購入あっせん業者は,割賦金の支払を請求することができる道理であるが,(ア) 割賦購入あっせん業者と販売業者との間に購入者への商品販売に関して密接な関係が継続的に存在していること,(イ) このような密接な関係が存在するため,購入者はいわゆる自社割賦と同様に,対抗事由が存する場合には支払請求を拒み得ることを期待していること,(ウ) 割賦購入あっせん業者は,継続的取引関係を通じて販売業者を監督することができ,また,危険を分散・転嫁する能力を有していること,(エ) これに対し,購入者は,契約の際に一時的に販売業者と接するに過ぎず,また,契約に習熟していないし,危険負担能力が低いなど,割賦あっせん業者と比較して格段の能力差があることなどの諸事情に鑑み,消費者の利益を保護するという社会的要請に応える趣旨で規定されたものである。
(2) したがって,消費者が割賦購入あっせん業者に対し,抗弁を対抗することが信義に反すると認められる特段の事情がある場合には,抗弁対抗は許されないところ,「特段の事情」の有無については,次の諸点を総合的に考慮して,これを決すべきである。
@ 消費者において,売買契約又は本件立替払契約に関し,単なる過失や不注意が存するのみならず,故意又は故意に比肩すべき重過失が存するか否か(消費者が割賦購入あっせんに係るトラブルに巻き込まれる際には,販売業者のぎまん的な勧誘に騙される場合が多いところ,そのような場合には,多少なりとも消費者の過失・不注意の存することがむしろ一般であるから,単なる過失や不注意のみによって抗弁対抗を制限できると解すれば,同条の趣旨及び目的を没却する。他方,故意等の存する消費者を保護することは,契約に習熟していない消費者を保護するという
法の趣旨及び目的に合致しない。)
A 消費者が販売業者から得た利得を勘案し,両者の取引から生じた危険を,割賦購入あっせん業者ではなく,消費者に負担させることが許容されるか否か(危険負担が許容される消費者を保護することは,危険負担能力の低い消費者を保護するという法の趣旨及び目的に合致しない)
B 割賦購入あっせん業者において,販売業者への調査を怠ることがなければ,同業者を監督するなどして危険を回避できる具体的状況にあったか否か(割賦あっせん購入業者において,販売業者を監督することが不可能であったならば,本来は消費者の負担すべき危険を肩代わりする根拠を欠く。)
(3) そこで,前示認定したところに基づき,上記「特段の事情」の有無につき検討する。
@ 故意又は重過失の存否
原告らは,本件契約により,形ばかりの作業をするだけか,あるい何ら実質的な作業をすることなく,dから本件寝具購入代金を大幅に超えるモニター料の支払を受けることができるという話に,疑問や不審を感じたが,ビジネス会員らの巧みな説明を受け,半信半疑ながらも,モニター料の高額さに目を奪われて,本件各契約及び本件立替払契約を締結したものであり,原告らにおいて,本件各契約に際し,相当の落ち度があったものと言わざるを得ないが,故意又は故意に比肩しうべき重過失があったとまではいえない。
A 原告らに危険を負担させることを許容する事情の有無
原告らは,本件各契約に関して,@ 本件寝具の引き渡しを受け,Adから,別紙一覧表1ないし3の「モニター料等受領額」欄記載のモニター料等を受領している。
原告らは,dのぎまん的勧誘方法に乗せられて,本件寝具の価値や効用に魅せられたというよりも,月々のモニター料と割賦金の差額を稼ぐことを主目的に,本件各契約及び本件立替払契約に及んだものであり,結果的には,@ 本件寝具の取得価額(ただし,後述のとおり,本件モニター契約を前提とする価格〔シングルサイズ36万円,ダブルサイズ46万円〕をもって,本件寝具の取得価額であるとはいえない。),A モニター料等を,ほとんど労することなく手中にしている。
そして,旧割賦販売法30条の4の趣旨及び目的に照らしても,@の取得価額及びAのモニター料等を合計した限度で,原告らに本件契約の危険を負担させることは,許容されるものと考えられる。
B 被告らがdを監督できた可能性の有無
ア 加盟店管理義務
旧通産省(現経済産業省)は,
@ 昭和57年4月13日付けで,社団法人Y協会を通じて,同協会会員に対し,商品の供給等が適正かつ円滑に行うことができない販売店等を加盟店としないなどを求める行政指導をし,
A 昭和58年3月11日付けで,社団法人Y協会を通じて,同協会会員に対し,加盟店契約締結時やその締結後において,販売業者が取り扱う商品及び役務の内容並びに販売方法等を十分把握するなどを求める行政指導をし,
B 平成4年5月26日,社団法人Z協会を通じて,同協会会員に対して,昭和58年通達に定めた措置を励行することに加え,加盟店の審査・管理の厳格化,顧客の特殊な誘因方法等により商品を販売する加盟店の審査・管理について,継続的かつ徹底した管理を行うことを求める行政指導をした。
このように,被告ら信販会社については,信販会社が行っている立替払契約が,悪質な販売業者の不適切な販売行為を助長することがあるから,これを防止するために,信販会社が加盟店契約を締結する際の審査や加盟店契約締結後における加盟店の調査・管理を適正に行うことにより対処することが求められている。
イ 被告aについて
前示(一)に認定した事実にそこで挙示した証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次のとおり認定できる。
あ 被告a担当者は,平成10年4月3日,gを親番加盟店とし,dを子番加盟店とするクレジット利用契約を締結したが,その事前調査で,w社長から,寝具の販売価格と比較して高額の紹介手数料を支払っている旨の説明を受け,w社長に関係資料の提出を求めたのに,同社長からこれを拒否された。ところが,被告a担当者は,dに対する更なる調査を行わず,w社長の説明を軽信して,dの寝具販売方法には問題がないとして,dとの間にクレジット利用契約を締結した。
い その後,被告aは,dの顧客との立替金契約の件数が高い水準を示したことから,dの加盟店調査をする必要が生じ,同年7月中旬,w社長と面談した。その際,被告aは,w社長から,モニター会員やビジネス会員がいること,dは,これらモニター会員やビジネス会員を通じて本件寝具を販売していること,これらモニター会員やビジネス会員がdに顧客を紹介すれば,dは,これらモニター会員やビジネス会員に高額の紹介手数料を支払っていることを告げられたのに,それ以上の調査をせず,dの寝具販売方法には問題がないと軽信して,引き続きdとの間で加盟店利用契約を継続した。
う さらに,被告aは,同年10月中旬,dの顧客から,「dから寝具を購入してモニター会員になると,毎月モニター料がもらえるが,もらって大丈夫だろうか。」との問い合わせを受け,同年11月初旬,上記顧客から郵送された「ニュービジネス」(モニター会員及びビジネス会員制度の概要を記載)により,dの本件モニター商法(モニター会員制度及びビジネス会員制度)の概要を知った。ところが,被告aは,w社長から,「@ モニター会員は,全寝具購入者の1,2割程度あり,今後順次ビジネス会員に切り換えていき,来年度には廃止する。A ビジネス会員制度は,連鎖販売取引類似の制度ではあるが,純然たる連鎖販売取引のように組織化されているものではない。」との説明を受け,それ以上の調査もせずに,この説明を真に受けた。
そして,被告aは,w社長から,ビジネス会員制度の変更等に時間を要するなどとして,平成11年3月までの猶予を求められたことから,これを受け入れ,引き続きdとのクレジット利用契約を継続した。
上記認定したところによると,被告aは,上記各時点において,調査が不十分であり,加盟店管理に落ち度があったといわざるを得ない。
ウ 被告b
前示(一)に認定した事実にそこで挙示した証拠のほか,甲116ないし127,丙20並びに弁論の全趣旨を総合すると,次のとおり認定できる。
あ 被告bは,平成10年10月10日,dとの間で加盟店契約を締結した時点で,既に,x営業所長(以下「x」という。)からの説明から,dには,モニター会員制度やビジネス会員制度があり,モニター会員は,月3万5000円のモニター料を24か月間にわたって受け取れることや,連鎖販売類似取引の方法により,寝具を販売していることを知っていた。
ところが,被告bは,xの説明から,モニター会員は寝具購入者の僅か1,2パーセントに過ぎず,dの連鎖販売類似取引は,法律上適法な制度であり,被告bと立替払契約を締結する者には,モニター会員やビジネス会員は含まれないと軽信し,それを裏付ける資料も徴収せずに,dとの間で加盟店契約を締結した。
い 被告bは,その後もdの本件モニター商法の全容を完全に把握しないまま,dとの間でクレジット利用契約を継続した。
上記認定したところによると,被告bには,dとの間で加盟店契約を締結し,継続するにつき,調査が不十分であり,加盟店管理に落ち度があったといわざるを得ない。
エ 被告c
前示(一)に認定した事実にそこで挙示した証拠のほか,甲74,丁7,8並びに弁論の全趣旨を総合すると,次のとおり認定できる。
あ dは,平成9年8月ころからモニター会員制度を導入し,平成10年1月からビジネス会員制度を導入すると,被告クオークの立替金契約の取扱件数が急増したことから.被告cは,dに対する加盟店管理を厳格にする必要が生じた。そこで,被告cは,平成10年2月,w社長と面談して,dの販売方法を確認したところ,同人から,モニター会員という言葉や,寝具の販売価格と比較して高額の紹介手数料を支払っている旨の説明を受け,w社長にその裏付け資料の提出を求めたが,その提出を拒まれた。ところが,被告cは,dに対するさらなる調査を行わず,w社長の説明を軽信して,dの寝具販売方法には問題がないとして,dとの加盟店契約を継続した。
い さらに,被告cは,同年7月14日,匿名の顧客から,dのモニター会員制度やビジネス会員制度について,問い合わせの電話を受け,dに照会したところ,同月16日には,w社長がビジネス会員制度の存在は認めたが,モニター会員制度の存在を強硬に否定した。これに対し,被告cは,w社長の説明を軽信し,dがビジネス会員制度を採用しているのを知りながら,モニター会員制度は存在しないと信用して,引き続きdとの加盟店契約を継続した。
う 被告cは,平成10年8月以降も,dのモニター会員制度の存在を知らず,dの本件モニター商法の全容を把握しないまま,dとの間で加盟店契約を継続していた。上記認定したところによれば,被告cは,上記各時点において,調査が不十分であり,加盟店管理に落ち度があったといわざるを得ない。
(4) 以上検討したところを総合すると,
@原告らには,本件各契約又は本件立替払契約に関し,故意又は故意に比肩すべき重過失は存しないものの,
A原告らが本件契約に関して得た利益に照らせば,
@ 本件寝具の取得価額,A dから受領したモニター料等額を合計した金額の範囲で,原告らにおいて,本件モニター商法に伴う危険を負担することを許容すべく,他方,
B 被告ら信販会社において,適切な加盟店調査をしておれば,本件モニター商法の問題を感知でき,dへの監督をするなどにより,危険を回避しうる蓋然性が高かったことから,法の趣旨及び目的からして本件モニター商法に伴うAの範囲を超える危険を甘受すべき立場にあることに照らせば,原告らにおいて,旧割賦販売法30条の4第1項に基づき,本件売買契約の公序良俗違反による無効を理由に,本件立替払契約に基づく割賦金支払請求を全面的に拒絶することは,信義則に照らして許されず,本件寝具の取得価額及びdから受領したモニター料額を合計した金額を超える額に限って,上記無効を対抗でき,被告らの本件割賦金請求を拒絶できるものと認めるのが相当である。
(5) そこで,本件寝具の取得価額(取得しうる市場価格)につき検討する。
@ m会は,「@ 本件寝具が工場で大量生産され,店頭で販売されている既製品の標準価格は,シングルサイズで2万9000円前後,ダブルサイズで4万1000円前後(仮に,素材である「ステイヤーズ」の価値を積算しても,シングルサイズで4万5000円程度,ダブルサイズで6万1000円程度),A 一級技能士が注文を受けて製作する際の標準価格は,シングルサイズで3万4600円から5万2200円,ダブルサイズで4万8900円から7万4700円である」旨回答している。
A 前提事実記載のとおり,dは,本件寝具につき,平成10年末までは関連会社である鰍奄通じてメーカーのg株式会社からダブルサイズ8万4000円,シングルサイズ6万3000円で仕入れていたが,平成11年からはサンエス工業株式会社から,ダブルサイズ7万円,シングルサイズ5万円で直接仕入れるようになった。
B gは,平成13年12月の段階で,ステイヤーズを使用した布団を,シングルサイズ(セットの内容は本件寝具と同様)29万8000円(インターネット価格24万8000円)で,ダブルサイズ38万8000円(インターネット価格33万8000円)で販売している。
そうすると,本件寝具は,gの製造にかかるもので,その卸売価格がシングル5万円,ダブル7万円であるが,@の回答に照らしても,上記価格が不相当であるとはいえず,消費者が小売商から取得するに当たっては,卸売価格に2割ないし3割の利益分が付加されることになることからすると,dが平成10年末まで関連会社である鰍奄通じて仕入れていたダブルサイズ8万4000円,シングルサイズ6万3000円に消費税を加えた金額(ダブルサイズにつき8万8200円,シングルサイズにつき6万6150円)をもって本件寝具の取得価額と認めるのが相当である。
2 結論
してみれば,原告らは,各モニター料等受領額に,本件寝具のダブルサイズ購入者は8万8200円,シングルサイズ購入者は6万6150円を加えた金額から,その既払金額を控除した金額については,信義則上,抗弁権を主張して支払いを拒むことはできないところであり,その算式にしたがって,算定すると,原告らは,別紙一覧表1ないし3の「認容額」欄記載の金額及びこれに対する遅延損害金につき,各被告に対し,それぞれ本件立替払契約上の支払義務を有することとなる。

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結語
以上の次第で,原告らの本訴請求は,いずれも不適法であるから却下すべく,被告aの反訴請求は,別紙一覧表1記載の各原告に対し,同表の「認容額」欄記載の各金額及びこれに対する平成13年3月28日から各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の各支払いを求める限度で理由があるから,上記限度で認容し,被告bの反訴請求は,別紙一覧表2記載の各原告に対し,同表の「認容額」欄記載の各金額及びこれに対する同表の「最終約定支払期日」欄記載の日の翌日から各支払済みまで約定の年6分の割合による遅延損害金の各支払いを求める限度で理由があるから,上記限度で認容し,被告cの反訴請求は,別紙一覧表3記載の各原告に対し,同表の「認容額」欄記載の各金額及びこれに対する同表の「最終約定支払期日」欄記載の日の翌日から各支払済みまで約定の年6分の割合(年365日の日割計算)による遅延損害金の各支払いを求める限度で理由があるから,上記限度で認容し,その余はいずれも理由がないので棄却すべく,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。